第20話 取り扱い商品の拡大について(その2)                                安易な新規分野参入は危ない!

みなさん、こんにちは。株式会社Cozy Consulting 代取の坂口です。

今回が、第20回目のコラムになります。20話の節目の話になります。

第20話は、新築戸建開発・販売を行っている不動産会社の社長とお会いした時に、相談を受けた話です。

「坂口先生、最近、新築戸建ての販売状況が鈍化していて景気の悪さを実感しています。中古ファミリーマンションのリノベ事業に参入しようと思いますが、何か注意点はありますか?」との質問を受けました。

最近、新築戸建ての販売状況がよろしくないというのは、他の不動産業者の社長からもお聞きしていたので、そうなのだろうと思いました。

立地が悪いとか、駐車場スペースが2台ないとかの戸建ては、販売するのに時間がかかっているとのことです。

  

売るのに時間がかかるようになったので、金融機関がその物件が売れるまで、新規の融資には慎重になっているとの話も聞きました。

金融機関の立場からすると、半年とかで戸建用地の仕入資金を融資して期日通りに返済されず、3ヶ月とか6ヶ月とか期日延長するというのは、非常に印象がよくない、売れるまで次の融資は見合わせという態度をとるのはよくわかります。

  そこで、中古ファミリーマンションのリノベ事業を検討しょうという発想になられたのでしょう。

私は、以前、銀行で中古マンションのリノベ事業者専用に、物件の仕入資金を融資する商品を扱っていました。

ざっくり言うと、当座貸越か手形貸付で融資枠を設定しその枠の中で仕入の都度融資をします。

仕入決済日から半年の融資期間で、融資対象物件に根抵当権の本登記か仮登記を設定。

短期間で売れた場合でも、すぐに担保抹消書類を売買の場所に司法書士が持参するという使い勝手のよい商品でした。

リノベ事業者には、この融資商品をよく使って頂きました。その経験から様々なリノベ事業者の経営を見てきました。

うまく事業が回らない事業者のよくあるケースは、①仕入物件の高掴み、②リノベ企画がまずい、③リノベ工事が遅い、④売却想定価格が高すぎる(一次取得者が買えない価格になっている)、等の理由で、当初の販売期間(融資日から半年)までに売却できず、そういう販売物件がいくつか出てきて、資金繰りに詰まるパターンです。

うまくリノベ事業が回っている業者は、事業運営に必要な組織を回す能力を身に着けており、日々改善することでその能力を高める努力をしています。概ね仕入れから半年で物件を売り切るノウハウを確立できています。

銀行から見ると半年の融資期間で融資したお金が売却により返済されるので、安心して融資ができます。

仮に、売れなくてもそのようなうまく回っているリノベ業者は、自己資金で融資を返済し、次の物件仕入れの別の融資を受けて、事業を回しています。このパターンであれば、銀行は次の融資対応が可能となります。

したがって、何を言いたいかと申しますと、「うまくいくことを前提に、自社で独自に事業領域を広げると、かなりリスクが高い」ということです。

うまく事業を回しているリノベ業者は、時間の経過の中で経験を積み、組織としてリノベ事業をうまく回す知恵や経験、ノウハウがあります。そのノウハウの獲得には一朝一夕にはいきません。

どのようなノウハウがあるかは、これまでお金を融資してきた銀行の立場で、多く見聞きしてきました。

優れたリノベ業者には、仕入から、リノベ企画、リノベ工事、販売までの一貫したシステムが確立されています。概ね仕入れから半年以内で売り切るノウハウがあります。

質問を受けた社長には、次のように答えました。

「中古ファミリーマンションのリノベ事業は、完成中古物件を仕入れるので、開発リスクはなく比較的リスクを限定して利益を上げられるビジネスです。

然し、競合他社が多く存在し、最近は大手も参入しているレッドオーシャンな分野です。中小企業でリノベ事業の分野で成功している業者は、業歴が長く、仕入れから半年で物件を売り切るノウハウを確立しています。そのノウハウは日々組織で改善活動を進め、かなり高い領域にきています。

全くノウハウのないこれからリノベ事業を始める会社が参入するには、非常にリスクが高いと思います。御社独自ではじめると経営に深刻な打撃を及ぼすかもしれません。手順を踏んで参入されることをお薦めします。

どのような手順を踏んで進めるかは、弊社のコンサルティングでご説明しています。ご興味があればコンサルティングの導入をご検討下さい。」

中古ファミリーマンションのリノベ後の販売価格は、首都圏では70㎡換算で平均価格7,000万円を超えています(東京カンテイ資料)。

一次取得者から見ても手軽に手を出せる価格とは言えない水準まで高騰してきています。

リノベ事業者が予定通りの価格と販売期間で販売できないと、資金繰りを圧迫します。

それが2・3戸続くと、中小企業にとってはかなりシンドイ状況になります。

銀行との融資取引にも悪影響を与えます。

採算を悪くして販売すると赤字になり、これが積み上がると経営に大きな打撃を与えます。

不動産ビジネスは、取り扱う単価が大きいので、成功すれば儲けは大きいですが、うまくいかない場合は、資金繰りの悪化に直結し経営に大きな悪影響を与えます。

新陳代謝の激しい業界ならではの特徴です。
 

今日は、この辺で話を終わらせます。ありがとうございました。